DXを推進し
福田道路の明日を創る
建設事業部長 神林 英男(かんばやし ひでお)
DX推進室長 阿部 浩明(あべ ひろあき)
多様な現場でICTを活用し、施工の可能性を拓く
福田道路において、ICT技術を取り入れる動きは今に始まったことではありません。建設業界でも高精度を求められる道路整備に関わる私たちは、常に最新の技術を取り入れ、また技術を開発し、「一歩先」を目指してきました。
中期経営方針の1年目、2022年にも画期的な工事を行っています。その一つは、車両搭載型測量システム(MMS)×全地球航法衛星システム(GNSS)×マシンコントロールICT建機による舗装修繕工事です。これが標準化されれば、道路規制を伴う事前の現地測量、切削前のマーキングが不要になり、生産性はもちろん、工期短縮により国道利用者の利便性も大きく向上します。
また、狭小エリアでのICT施工にも挑戦しました。トータルステーションによる測量×マシンコントロール機能搭載のミニバックホウによる440㎡の倉庫内の路盤整正です。ブレードの上下及びアングル動作が自動制御されるので、オペレータは走行操作を行うだけで高精度の施工が実現。工事の規模に関わらずICT施工が可能なこと、さらに、技術の脱属人化が可能なことも見えてきました。
DXで目指すのは建設業界の課題の解決
建設工事には実に多様な技術が必要で、多くの技術者が関わります。さらに、同じ目的のための工事でも、規模や環境が異なれば、アプローチや施工方法が変わってきます。こうした建設業ならではの特徴が長時間労働や生産性の低さにつながり、人材不足に拍車をかけてきた現状を変革するのが、建設DXの目標です。
たとえば、これまで技術者の経験と勘に頼っていた作業や業務をデジタル技術によって標準化し、技術の継承を図る。建機のコントロールや操作を自動化して、建機周りの人員を減らし、安全性と施工性を向上する。測量・設計・施工・管理の各プロセスで図面や情報を共有し、生産効率を上げる――これらは、工事品質を向上させると同時に、働く人の負担を減らすことで働きやすい環境の構築にもつながっています。
一方、新しい技術や業務フローの導入には、エリアやプロジェクトの種類、施工に関わる人々の考え方により温度差があることは否めません。また、ハイスピードで進歩する技術に対応するための教育や研修、情報提供などもDX推進の課題です。
RPA×AI-OCRを導入し、業務フローを効率化
2022年1月に立ち上げたDX推進室は、福田道路のDX推進を担う専任部署です。DXに挑戦する意欲を高め、実行するために、まず社内に向けICT施工の事例紹介・技術解説などの情報発信、さらに、道路管理者や地域、大学生に向けての新技術の見学・体験機会の提供、併せて広報にも取り組んでいます。「知る」「体験する」ことで不安や負担を取り除き、一歩が踏み出せると考えているからです。
同時に、ロボットによる業務自動化ツール・RPAを導入し、パソコン上で行う業務の効率化を図っています。業務におけるブラックボックスをなくして状況を共有し、だれもが状況を把握でき、だれでも作業できるようにするのが狙いです。
RPAと高精度で文字の読み取りができるAI-OCRを連携させて、データ入力から保管までのフローを自動化も進めています。業務の効率化とぺーパーレス化により、コストの削減や環境への配慮が叶い、ワークライフバランスの推進が期待できます。
大きなサイクルをつくり、DXを加速させたい
「建設DXを進めていくには『柔軟にトライする』『サイクルをつくる』の二点が必要です。
現在、大規模工事や公共事業の案件ではICT施工が一般的ですが、狭小エリアでの工事やそれまで導入例のない工事にも『柔軟にトライ』し、適用を拡げていってこそDXです。そのために、現場での活用を後押ししていきたいと思います。実際に、手間や労力が減り、業務時間が短縮される、施工しやすい、ミスやロスを防ぐことができる、施工精度が上がるという声が上がっています。こうしたメリットを共有し、『工夫しながらトライすることが大事だ』という意識をより多くの社員が持つことで、DXは加速するはずです。
また、一つの技術、一台のICT建機、一人の技術者という『単体』ではなく、技術と技術をつなぐ、機器と重機をつなぐ、部署や事業所の垣根を超えてつながる、そして、地域や協力会社と連携することで『大きなサイクル』をつくることも必要です。それにはもう少し時間がかかるかもしれませんが、これまで業界に先駆けて技術変革に挑んできた私たちの使命だと考え、真摯に取り組んでいこうと思っています。」/建設事業部長 神林英男
目標とメリットの共有により、DXの浸透を図る
「クラウド上のストレージ、AI-OCR、RPAの導入、外出先から社内ネットワークに接続できるクラウド型リモートアクセス環境の構築など、ツールを揃え、DX推進のための環境を整備してきました。現在では、現場と事務所を人が行き来しなくても作業ができるので、移動によるストレスや時間のロスがなくなり、作業効率が上がりました。また、業務フローが明確かつシンプルになって『この人でなければできない、わからない』ことは減り、スムーズに進められるようになっています。
ただ新しいことにチャレンジするということは、それまでのやり方を変えることであり、導入する方にも使う方にも大きなパワーが必要です。目標を共有し、メリットを実感してもらい自律的な行動につなげるという態勢をしっかりと整えていきたいと思っています。それぞれの業務に必要なところから始め、まずは部署で、そして全社へ波及させてDXが浸透していくように情報発信やサポートを続けていきます。」/DX推進室 阿部浩明